ビールとポップコーン

ネタバレ書かずに、観た映画(ときどき読んだ本など)を雑文多めに記録しています。

「その夜の侍」を観ました

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その夜の侍(2012)

率直な感想は「とんでもないものを観たぞ…」です。

私は映画が好きですが、新作映画をこまめにチェックして足しげく劇場に通うタイプではなく(これについてはちょっといかんと思っているところではあるけれど)、巷の話題をネットやTwitterなんかでチェックしているわけでもなく。レンタルショップやNetflixなどでさして内容も知らずになんとなく「観てみようかなー」という感じで選んでいます。この作品もNetflixのマイリストに入れたことすら忘れていて、堺雅人は「倍返しだっ」くらいしか知らないし、山田孝之綾野剛は…ウシジマくんじゃないの、観てみよー」という軽い気持ちで観てみたら…「なんだこれは」という感じでした。

 

物語は、妻(坂井真紀)を交通事故で亡くした主人公(堺雅人)が、妻をひき逃げした犯人(山田孝之)に復讐しようとするお話。大筋はこの通りですが、この映画で最もだいじなのは「ドラマチックな復讐劇」というより「会話を通して描かれる人間の普遍性」だと思いました。

人を轢いてしまうまでの車内の会話、人をリンチして穴に埋めようとしている時の会話、殺人を決行する前のデリヘル嬢との会話、そして積年の恨みを晴らすべくその相手と対峙した時の会話。それぞれ状況は特殊だけれど、その会話はとても普遍的で笑ってしまうくらい。変にドラマチックでなく、観客の感情を掻き立てることもなく、挨拶から始まったり、天気やスポーツの話をしたり、昨日見たテレビの話をしたり。非日常を描いているようでとても日常的で、なんだか不思議な感じがしました。

先に「観客の感情を掻き立てることもなく」と書きましたが、それはあくまで「わかりやすい方法で刺激せず説明的でない」ということであって、もちろん胸が締めつけられるような悲しいシーンや、息を飲む緊迫したシーンはありました。それらの全てが役者の演技あってこそで、どの役者も文句なしに素晴らしかったです。

ど近眼で分厚いメガネに薄汚れた作業服姿の堺雅人、どうしようもないクズチンピラの山田孝之、クズな友人に従ってばかりの綾野剛、チンピラにリンチされたのに金魚の糞になっている田口トモロヲ、亡くなった妹の夫に元気になってほしくて手を焼く新井浩文、デリヘル嬢の安藤サクラ……その他でんでん、高橋努黒田大輔など工場メンバーも、みんながぴったり収まっています。

クライマックスの堺雅人山田孝之の演技なんかもう、本当に凄みしかない。ネタバレになるので書きませんが、ここで堺雅人がある記録を読みあげるシーンとその後の台詞の意味がずっと気になってモヤモヤしています。そしてラストシーンも。堺雅人がある行動をとるのですが、なんせ台詞も何もないので「どうしてそんなことをするの?」ってこちらが想像するしかない。でも、それこそがこの映画の良さなのだけれど。

 

この映画が公開された時どれほど話題になったのか分からないけれど、豪華キャストなのに全然商業的じゃないからあまりウケなかったような気がする。でも私は、こういうわかりにくい映画、日本でももっと作ってどんどん評価するべきだと思います。監督の赤堀雅秋さんは演劇の人らしい。調べたらもう1作映画を撮っていたので、近々観てみよう思いました。

 

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2017年はここに書いていない映画も含めて、117本の映画を観ました。

 

 

その夜の侍