ビールとポップコーン

ネタバレ書かずに、観た映画(ときどき読んだ本など)を雑文多めに記録しています。

「リンダ リンダ リンダ」を観ました

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リンダ リンダ リンダ(2005)

学園祭でバンド演奏する女子高生のお話。ボーカルがいなくてどうしよ、ってところにたまたま通りかかって訳も分からず「うん、やる」と言ってしまったのが、韓国人留学生のソンちゃん(ペ・ドゥナ)。日本語もままならないソンちゃんをボーカルに迎え入れて(というか巻き込んで)から本番までの青春譚。

教科書通りの起承転結なのだけれど、いくつかの小さな裏切りがあるのがよかったです。例えばライブを目前に控えた大ピンチ。メンバーの1人がフラれて行方不明とか?とおもったら違った。でそのあと、じゃあ今度こそフラれたメンバーが本番に吹っ切れて素晴らしいプレイして大盛り上がりの大円団だ。とおもったらこれも違った。
本番のステージに上がってチューニングとか音出してる時「どうだった?(告白したの?)」とやりとりするシーンがずるい。あと途中で韓国語と日本語で「ゴースト・ドッグ」みたいになるシーンもずるい。
いろいろずるいシーンがあって、山下敦弘監督って山田孝之とつるんでくだらないことやってるだけじゃないんだ!シンプルな青春映画の名手!とおもいました。どうりで「好きな映画」としてこの映画を挙げる人がいるわけです。
それから、甲本雅裕に女子高生が演奏するブルーハーツを聴かせながらしんみりした表情させるのとか「わーあざとい」とおもいつつも、ちょっとグッとときてしまいました。してやられたり。


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わたしにとってのブルーハーツの思い出。


小学校に上がる前、保育園が終わってから恐らく夜の9時くらいにかけて預けられていた家のお母さんが、いつもブルーハーツを聞いていました。

わたしはその家の同い年の乱暴な女の子にいじめられていて、いまおもえば精神的な苦痛からか、その家に預けられると吐いたり熱を出したりしていました。でもブルーハーツ好きのお母さんはとても優しくて、体調が悪くなったわたしを抱いたり撫でたりしてくれるから、わたし同様きょうだいのいなかった女の子のイジメはそれでまたひどくなったりもしました。
他人の家に預けられている心細さ、吐いてしまったときに女の子に「汚い!」と罵られる惨めさ、その奥でいつも聴こえているブルーハーツ。恐らく意図的に膝の部分が裂かれていて、その周りには滲んだ血の染みが残るブルーデニムが団地の狭い和室の鴨居にぶら下がっていたのも、やたら鮮明に思い出せる記憶です。

 

母は仕事帰りに私を迎えに来ると、スクーターの荷台に私を乗せ「絶対に手を離すんじゃないよ」と言ってから、家への道を走り出します。荷台のへりをこれでもかってくらいのすごい力で15分くらい握り続けているものだから、自宅に着く頃には完全に手が痺れて簡単に開くことができなくなっていました。
当時のわたしにとっては風を受けながら走る乗り物に乗って夜の道路を走るのも、自宅に着いてもおまじないにかかったように手が開かないのも、他人の家でいじめに耐えたごほうびとしてのおたのしみ感覚でした。

しかしながら、自分が当時の母の歳を越えたいまおもうのは、荷台に年端もいかぬ子を乗せて「絶対に手を離すんじゃないよ」と言う時の心苦しさや、簡単に開かなくなるほど痺れた手にはしゃぐ子を見た時の切なさです。いまのわたしよりも若かった母は、わたしより何倍もたくましかった。というより、しょうもない夫のせいで何倍も苦労して、たくましくならざるを得なかったのだろうけれど。

 

その後中学生になってハイロウズの結成とともにブルーハーツを聴くようになって初めて、あの時あの家で流れていたのはブルーハーツだったんだ、と知るに至りました。いじめられていたり寂しいおもいをした、というようなトラウマなど一切なく、わたしはブルーハーツを聴きまくったのでした。

 

当時の事を母に聞いて、わたしが預けられていたのは母の友人宅で、あの古い団地の一区画は母子棟だったと知りました。シッター代として、食事代も含めた相応のお金を渡していたということも。だからあんなに優しかったのか?と一瞬疑ってしまったけれど、母は「彼女はそういう人じゃない」とキッパリ言いました。確かにわたしの記憶の中にいるブルーハーツのお母さんは、そんなせこい人間の笑顔ではなくて、本物の優しい笑顔でわたしの頭を撫でています。この親子がいまどうしているのか、わたしの母も連絡を取っていないからわからないそうです。

 

それから、母が乗っていたスクーターはカブだとおもっていたのですが、母曰くラッタッタ(ホンダのロードパル)だったと。言われてみれば黄緑色をしていたような気がしなくもない。そして、バイクや自転車ではなく車を運転しているイメージが強い母がなぜその時期ロードパルに乗っていたのか、というのは、また別のお話。

 

 

 

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