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ビールとポップコーン

ネタバレ書かずに、観た映画(ときどき読んだ本など)を雑文多めに記録しています。

「ムーンライト」を観ました

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ムーンライト(2016)

アカデミー賞で話題になったからか、日本公開が1ヶ月くらい前倒しになったと知って、あわてて観に行きました。

周りには「ラ・ラ・ランド」素晴らしかった!という声があるし、わたし自身ミュージカル映画が好きだから「ラ・ラ・ランド」はたぶんすごくいいのだろうけれど、結局あわてて観たのは「ムーンライト」だったわけで。作品賞受賞に日和ったような気もするけれど……でも、すぐにでも観たかったのです。

 

物語は、シャロンという少年の少年期、青年期、成人期の3章から成っています。

シャロンはマイアミのほぼ黒人しか住んでいないエリアに住んでいて、学校ではいじめられているし、家ではお母さん(ナオミ・ハリス)から育児放棄を受けています。ある日、いじめから逃げて隠れていたところを、フアンというキューバ人のおじさん(マハーシャラ・アリ)に助けられます。おじさんはシャロンを家に連れ帰り、恋人のテレサ(ジャネール・ネモイ)に食事を作らせ、一晩泊めてあげます。これをきっかけに、シャロンはフアンのことを慕うようになります。シャロンには、同じ学校のケヴィンしか、友だちはいませんでした。

 

 

全体を通してとても静かな映画で、説明的なものは一切排除されていました。なので頭で(理屈的に)理解するというよりも、ただ感じればいい、という映画だなとおもいました。マハーシャラ・アリナオミ・ハリスの演技はもう、素晴らしく良くて、あとシャロンを演じた3人に共通するじっとこちらを見つめる演技がとても心に刺さりました。孤独や悲しみ、疑い、絶望と希望を含んだ力強い視線、堪らなかったです。

シャロンは少年期から成人期にかけてとにかくずっと孤独です。心の拠りどころもあるのだけれど、裏切りもあって、とにかくずっと孤独なのです。ジャンキーのお母さんのこと、初恋相手は幼馴染の男の子であること、そういうことをすべて抱え込んで心にしまいこんで生きている。

“ブラック”という通称で暮らしている成人期のシャロンは、心にしまいこんだものを隠すように、身体を鍛え上げてグリルズをつけて、完全防御スタイルです。華奢で細いデニムを履いていじめられていた青年期のシャロンとはまるで別人。

そういうとてつもない孤独とともに生きてきたシャロンですが、ラストはとてもロマンチックで救われました。映像もとてつもなく美しくて、映画史に残るラストだとおもいます。

 

この映画、映像の光と色がびっくりするほど美しくて、ポスターにもあるようにブルーとバイオレットがとても効果的に使われています。「月あかりの浜辺で黒人の少年の肌はブルーに輝いていた」というようなセリフが物語の中にあるのですが、深いブラウンカラーの肌が本当にブルーに光って、とても美しかったです。それから、頬を伝う涙がすごく美しかった。

 

万人受けする映画ではない、というのは明らかです。黒人もゲイも社会的にマイノリティ扱いだし、貧困やドラッグの身近に暮らしている人たちもまた然りだから。物語も派手な事件や展開はなくて、とても個人的なものだから。

でも、孤独な一人の男性の叙情的な愛の物語として、描かれる感情はとても普遍的なものだとおもいました。男性として男性を求めた愛、育児放棄された少年に差し伸べられた愛、母親らしいことをしてあげられないけれどそれでもやはり息子を想う母親の愛、それらの愛は誰でも共感できる普遍的な愛情なのではないかとおもいます。