ビールとポップコーン

ネタバレ書かずに、観た映画(ときどき読んだ本など)を雑文多めに記録しています。

「日本で一番悪い奴ら」を観ました

f:id:somewherearoundhere:20170207190651j:plain

日本で一番悪い奴ら(2016)

白石和彌監督の実録犯罪映画ということで「凶悪」のような重々しいというかかなりダークな雰囲気の映画かと思いきや、のっけからラストまで2時間ちょい、ハイテンションで笑えるコメディでした。

とはいえ、警察官による犯罪であり、(少々ネタバレ含みますが)違法捜査などを組織が容認していたことや死者が出ていること、組織のおエラ方たちは罪を問われていないことなど、これらが実話である以上「ははは〜おもしろかった〜」で終わらせられない大変恐ろしいお話です。

 

諸星(綾野剛)は大学時代の柔道の成績を買われ、北海道警へ就職します。その期待に応えるように警察の柔道大会では優勝を収めますが、警察官としてはちょい上の先輩警官(青木崇高)に押されて、調書の書き写しなどする日々でした(地味で真面目)。

そんな諸星を見かねたベテランの風格(ヤクザ風味)をもつ村井(ピエール瀧)は諸星を夜のススキノへと連れ出し、「警察官は点数がすべてだ」と説きます。そのためには自らクソの中に入り込み、“S(=スパイ)”を持つことが重要なのだ、と。

早速、諸星は名刺に「正義の味方、悪を断つ」と書き加えると、ススキノの飲み屋からチンピラ、ゴロツキの類にまで名刺を配りまくるのです。

こうした草の根活動の甲斐あって諸星は着実に点数を稼ぎ、そのうち「エース!」なんて呼ばれるようになるわけです。「押忍」が口癖のバカ真面目な警察官は見た目もチンピラよろしく、ススキノの繁華街を歩けば彼を知らぬ者はいないという程に成長します。

 

殴る蹴るの暴力描写からセックス描写まで、綾野剛はまさに体当たりな演技を見せてくれるのですが、相当な気合いがこちらにもビシビシ伝わる素晴らしさでした。

それから主人公の“S”たち。地元ヤクザの組長・黒岩を演じた中村獅童も、元ヤクの運び屋でラムネを食べるみたいにハルシオンをボリボリ食べるチンピラの太郎を演じたYOUNG DAISもすごくよかった。デニスの行雄ちゃんはブラジルとのハーフなのに、しっかりパキスタン人に見えるので笑えます。演技どうの、はよく分からないけれど、本業の外国人俳優を起用するよりも滑稽さがあってよかったと思います。

特にYOUNG DAISの、オラオラタイプでなくて子犬系舎弟がとてもいい。主人公と太郎の兄貴&舎弟関係はラストに切ない展開を迎えて、この映画の中でいちばん切なかった。でもって、ヤクザ映画やギャング映画によく見る盛者必衰の理をきっちり描いているのがいいのです。

 

主人公は悪なんかじゃなくて、ただ上司の期待に応えようと、組織に貢献しようと、本当にバカ真面目に違法捜査で拳銃を集めていたのだと思います。無鉄砲ってやつです。

だからいちばん怖いのは、その無鉄砲さを容認していた警察組織で、泳がせ捜査なんか「えっ!これ事実なの?やばー」という感じです。目に見える成果偏重主義の組織の中で、感覚が麻痺していたのか、それともこれが当然だったのか。もしかして今でも警察組織の内部はこんな感じで、一般市民が青ざめてしまうような出来事が当たり前にあって表面化していないだけなのかも…なんて考えてしまいます。

 エンターテインメントとしてたのしく観ていると、ラストに「これは事実なのだ」と今一度突きつけられて、うぅとなる。

 

日本で一番悪い奴ら DVDスタンダード・エディション