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ビールとポップコーン

ネタバレ書かずに、観た映画(ときどき読んだ本など)を雑文多めに記録しています。

「The Propaganda Game」を観ました

★★★★☆

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The Propaganda Game(2015)

日本から近くて遠い国、北朝鮮。この映画は、スペイン人映像ディレクターが実際に北朝鮮に行ってみて見聞したことをまとめたドキュメンタリー作品です。

 

日本人にとっての北朝鮮は「将軍様マンセーって言いながらへーきで日本人拉致しちゃうし、完成されたちびっこたちは作り笑顔で歌ったり踊ったりしてて、ヒトもモノもなんだか昭和な雰囲気で、農村では餓死とかふつうにあって、国営放送のアナウンサーの喋り方がおかしくて…喜び組のいる国」というイメージで、たいていこれくらいの情報しかないんじゃないかと思います。

この映画を観るとその情報はあながち間違っていないということがわかるのですが、明らかに対外国対応をする北朝鮮ガイドや国民(人民)へのインタビューから、私の知らなかった北朝鮮という国を垣間見ることができました。

 

監督のインタビューには、主にアレハンドロというスペイン人が答えます。彼はスペイン人でありながら将軍様に忠誠を誓っていて、北朝鮮の政府機関で働きながら外国に向けて北朝鮮を紹介している人物です。まず「こんな欧州人が北朝鮮にいたとは!」ということに驚きです。彼の他にも北朝鮮人のガイドが常にクルーに付きまとっていて、勝手な行動はもちろんできないし、スケジュールも全て決まっているなかでの取材です。

北朝鮮社会主義の国なので、住まい、医療、教育は無料らしい。でも住居の場所は選べないし、医療は受けられても薬はないし(取材した病院もナースステーションがすっからかんだった)、学校では小さい頃から全体主義の政治思想を学ぶのだとか。「成分」とかいう名の「忠誠心によって分けられる階級」があるらしく、それによって色々違ってくるみたい。

でもその社会主義的全体思想は、マルクス、レーニン、毛沢東の思想を全部をごちゃまぜにしたもので何が何だかわからない代物になっていて、人民が信じて疑わない金日成の伝説もキリスト教の聖書のパクリだったりするらしい。「宗教?自由です!」って言って教会とか紹介していたけれど、それはあくまでも対外的な見せかけのもので、実際はキリスト教なんて絶対禁止らしい(だって金日成伝説がウソだってバレちゃうから!国内に聖書持ち込んだら逮捕です!)。

そして「将軍様マンセー!感涙」というイデオロギーが宗教に代わる役目を果たしていると…すごい国だ。

 

アレハンドロや北朝鮮人ガイドへのインタビューと海外の北朝鮮専門家たちの見解を交互に紹介しながら、本作の監督は北朝鮮という秘密のベールに包まれた国を理解しようと試みます。

しかし蓋を開けてみれば、人民たちは「百聞は一見にしかず、これが本当の我が国の姿です!海外での報道はうそです!」と語気を荒げて言うし、専門家たちは「いやいや、あいつらマジでうそだらけだから(笑)。ヤツらの国民に対する人権侵害といったら甚だしいでしょ!」と言うし、もう何が真実なのかわからなくなってしまいます。それはまさに、プロパガンダ合戦。

確かに北朝鮮のガイドも人民も、何かを隠していることはにおってくる。それでも全体思想を生まれた時から繰り返し繰り返し刷り込まれている彼らにとっては、将軍様がすべての人民の父であり、疑うことや自ら考えることなんて微塵もしないわけだから、我が国が正義、と思うのは当然なのでしょう。

「秘密主義だよね」という監督に対して、アレハンドロは「秘密で何が悪い!資本主義の毒が入り込まないようにしてるだけ!」って開き直っちゃう場面もあったし。とか言いながら商業施設にコカ・コーラという、資本主義の非常に美味い毒の名前が入った冷蔵庫が入り込んでいたのには笑いました。

 

まぁとにかく謎の多い危険な国だということがわかりました。海外の専門家たちは、ソ連という大きな後ろ盾が崩壊したことで北朝鮮核武装せざるを得ない現状も理解を示していましたが、敵対国である日本に暮らす私としては、こんな危険極まりない変態国家放置しとけばいいじゃん、と思うのと同時に、狭い海を隔てたすぐ近くに存在している何考えてるのか分からない不気味な国に対して言い知れない不安を覚えました。

あ、拉致問題あるから放置ってわけにもいかないのか…。

 

それから、この映画でいちばん笑ったのは、欧米の国際特派員のおじさんが言った「北朝鮮の兵器なんてポンコツだよ。アメリカ軍が宇宙船なら、北朝鮮軍はトースターだね」という発言です。トースターって!

 

 

The Propaganda Game [Import anglais]