ビールとポップコーン

ネタバレ書かずに、観た映画(ときどき読んだ本など)を雑文多めに記録しています。

「ザ・トゥルー・コスト 〜ファストファッション 真の代償〜」を観ました

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ザ・トゥルー・コスト 〜ファストファッション 真の代償〜(2015)

私たちが着ている衣服は、どこで、どのように作られているのか。00年代から世界的に大流行したファストファッションの裏側には、どのような真実があり、どのような仕組みをもって経済は動いているのか…。それらを明示したドキュメンタリーです。

2013年、バングラデシュの首都ダッカで起きた「ラナ・プラザ」ビル崩壊事故では、1,000人超の人々が亡くなりました。違法増築や建物の修繕をなおざりにした結果の崩壊でしたが、ビル内の縫製工場で働く多くの女性工員が亡くなり、低賃金で劣悪な環境で働く彼女たちの存在を世界中が知ったと同時に、その根源は世界展開しているファストファッション・ブランドにある、ということが露わになりました。

このことは大々的に報道されたので私も覚えていましたが、いざこのドキュメンタリーで目の当たりにした彼女たちの現実は、とてもショッキングなものでした。労働条件の改善を求めて抗議をしても、上司からリンチに遭ったり政府が実弾を使って弾圧するので、ここでもまた多くの血が流れているのです。可愛い盛りのこどもを農村に残し、単身都会に出て繊維工場で働く若い母親は「私たちの血で作ったものを、誰にも着て欲しくない」と涙を流しながら語っていました。

彼女たちのような第3世界の労働者の環境が一向に改善されないのは、その労働力に(直接的な責任を負わない形で)依存し、利益を搾取し続けている企業に原因があるのです。さらにその企業は、彼女たちの利益を搾取しているにとどまらず、購買意欲を刺激する広告と驚くほど低価格であるがために必要・不必要を考えずに買い物をしている消費者をも貧しくさせているのです。

また、ファストファッションがもたらした弊害は、利益追求主義による人権侵害だけではありません。より多くの綿花を収穫するための遺伝子組み換え種苗や農薬、なめし皮加工に用いられる薬品などにより、川や土壌の汚染や人体への著しい健康被害がもたらされています。これらは、ファストファッション企業が適正な価格で取引をし、且つきちんと工場監査をしていれば起こらなかった問題です。

また、早いサイクルで低価格で叩き売りされている衣服は恐ろしい量が廃棄され、それらは第3世界の国々へ「寄付」という形で一方的に送りつけられます。膨大なゴミと化した衣服は、自然に還ること無く空き地にうず高く積み上げられたまま、有毒ガスを撒き散らし悪臭を放っています。ファストファッションは限りある資源を食い荒らし、地球の環境破壊はますます加速しているのです。

人権も地球環境も無視している企業とは反対に、フェアトレードを企業理念にしているピープル・ツリーや、環境に配慮した衣服を作っているパタゴニアやステラ・マッカートニーも登場します。アパレル企業には、企業の利益だけでなく、生産者やそれに携わる人々の労働環境改善と地球の環境保全を慮ることが、当たり前の企業努力であってほしいと切に願います。また、エコノミストたちには、全ての人々に相応の利益がもたらされるように、この経済の仕組みを変えてほしい。そして影響力のあるファッショニスタたちには、この事実をどんどん発信してほしい。

そして個々人でできることは、まず真実を知り、その上で消費者として正しい選択をすることなのだと思います。私は不買など極端なことをするつもりは今のところ無いし、今後も「ファストファッション」と呼ばれるブランドの衣服を買うこともあると思います。ただ、その時には、衣服がどのように作られているのかを思い、本当に必要なもの、本当に欲しいものだけを買おうと思います。

ファストファッションのお店でよくショッピングをする人、それからブランドに関係なくファッションが好きな人は、是非見るべきドキュメンタリー映画です。「いのちの食べ方」同様、とても考えさせられました。 

 

ザ・トゥルー・コスト ~ファストファッション 真の代償~ [DVD]