ビールとポップコーン

ネタバレ書かずに、観た映画(ときどき読んだ本など)を雑文多めに記録しています。

「ヒップホップ・ドリーム」を読みました

ヒップホップ・ドリーム

 

ヒップホップ・ドリーム/漢 a.k.a. GAMI(2015)

2016年も半分過ぎたところで、今年最初の読書です。びっくり。

ヒップホップ偏差値の低い私がどうしてこの本を読むに至ったかといえば、いま話題沸騰の番組「フリースタイル・ダンジョン」のエンディングでチラッと本の宣伝をしていたのを見たからです。

そもそもこの番組を見始めたのは、TBSラジオ「ザ・トップ5」の火曜レギュラーだったサイプレス上野さんが、ラジオ内で自身も出演している「フリースタイル・ダンジョン」をぜひ見てください!と紹介していたのがきっかけ。なんだかおもしろそう〜と思って軽い気持ちで見てみると、これがめちゃくちゃおもしろい!ラップのフリースタイルバトルをマジメに見たのは初めてだったのですが、一気にどハマりしました。そこで初めて、ラッパー漢 a.k.a. GAMIさんの存在を知ります。

この本は漢さんの自叙伝であり、漢さんがかつて所属していたレーベルに対しての告発本でもあります。どんな家庭に育ってどんな青春期を過ごしたか、ヒップホップホップとの出会いやマイメンたちとの共同生活、様々なラッパーたちとのビーフも含めた交流、ストリート・ビジネスでのメイク・マネー。ラッパーとしてもひとりの人間としても酸いも甘いもどん底も経験し、ギャラ未払いや社員に対するひどいパワハラが横行していたレーベルを抜け、自身で新しいレーベル「鎖グループ」を立ち上げます。「大人の戦い」をする準備が整ったところで、己のヒップホップ流儀に確信を持つと同時に野望に満ちた結びになっています。

率直な感想は「なんて読みやすく、過激で、おもしろい本なんだ!」という事。まず、日本語ラップアンダーグラウンドに明るくない私でも、脚注があるので安心。さらにYouTubeのおかげで「こういうラッパーなんだ」と目と耳ですぐさま確認する事ができますし。それから、これは漢さんのラップスタイルにも通じる事ですが、難しい言葉を使わず出来るだけ話し言葉で(ユーモアを交えながら)書かれているので、するすると読み進める事ができます。

次に、小市民の私は「そんな事まで言って大丈夫なの!?」とドキドキしてしまうほど過激な事実も、隠す事なく語っています。漢さんのラップのポリシーは「事実しか言わない、フェイクは認めない」というものですが、当然本書もそのポリシーのもと書かれているわけで、日本の“ホンモノの”ギャングスタラッパーの実情を垣間見る事が出来ます。

そして「レペゼン新宿」ならではの、新宿で育ち暮らした人間にしか見えないかつての新宿の暗部や裏社会の描写は、学生時代は新宿で遊び現在は新宿近辺に住む私にとって、とても刺激的で興味深いものでした(これに関しては、もう何年も新宿在住のジャズマン菊地成孔さんも「(当時の新宿は)そんな感じでしたね〜」という風に回想されているし、そもそも菊地成孔さんはこの本を大絶賛しています)。

ラップに関しても人間関係にしても全てに共通する首尾一貫した信念と哲学を持っていて、コワモテだけれどどこかチャーミングでユーモアに溢れる漢さんの人柄が、この本からは伝わってくるのです。

この本を読む以前は(「フリースタイル・ダンジョン」を見るまでは、と言ってもいいかも知れないけれど)、アングラ日本語ラップってなんだかちょっと胡散臭い、と思っていました。結局不良がカッコつけてアメリカの真似事してるだけでしょ?と。クスリやハッパがなんだポリスがなんだマザファッカ!って言ったって、日本は銃社会でもないしチョー安全な国だし、ゲットー出身の黒人たちの文化を輸入したところで日本人にそれができるわけないじゃん。

そんな私が聴いてきたのは、スチャダラパーかせきさいだぁ、Shingo 02、あとはBUDDHA BRAND(実は非常に思い入れアリ)、THE BLUE HEARB…この程度なもんです。今となっては食わず嫌いすぎて笑える。

つまり私は「完全に誤解していた」事を、この本を読んでまざまざと思い知らされました。日本にもゲットーがあった、ストリート・ビジネスもあった、やるか・やられるかのバチバチのケンカもあった。それらの事実をリリックにして、日本におけるギャングスタを地でいく「リアル」なラッパーが、漢 a.k.a GAMIなのです。