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ビールとポップコーン

ネタバレ書かずに、観た映画(ときどき読んだ本など)を雑文多めに記録しています。

「ムード・インディゴ うたかたの日々」を観ました

★★★★★

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ムード・インディゴ うたかたの日々(2013)

ファンタジーとSFがごちゃまぜになった悲しい恋愛映画…簡単に言えばそんなところかもしれないけれど、実際はSFファンタジーでありつつ至極リアリスティックであるし、恋愛映画でありつつ社会や人間をシニカルに描いた映画でもあります。オープニングからエンディングまで幻想世界のお話のようですが、物語の大筋は、実はよくあるお話なのです。

原作はフランスの有名小説だということを知らずに見た私は、てっきりミシェル・ゴンドリー監督のオリジナル作品だと思っていました。それくらい原作の世界観とミシェル・ゴンドリーの表現がぴったり一致しています。これまでこの小説は何度か映像化されたのでしょうか?(確か日本でも永瀬正敏ともさかりえの映画があったような…)原作は未読だし他の作品も知らないけれど、この映画が原作に忠実に作られているということを知って、ミシェル・ゴンドリーが映画化せずに誰がする?と思ったのと同時に、原作は傑作なのだと確信しました。

先にも言った通り、この物語のプロットである悲劇の恋愛物語は、日本の漫画でもテレビドラマでも映画でもありふれていますが、それらはたいていがお涙頂戴だけの話で、ひねくれ目線かもしれませんが、どうしても作り手の「いかに泣かせるか」が見えてしまって鬱陶しい。

しかしこの作品は、悲劇の恋愛物語をベースにして、様々な思想を見ることができます。例えば、ドアベルや靴などの無機物が意思を持っているかのように動いたり、人間の身体が音楽に合わせてぐにゃぐにゃねじれたり曲がったり、体調悪化と同時に部屋が小さくなったり荒んできたり、これらは一見とても奇抜な表現だけれど、視点を登場人物の主観に変えれば心象が具現化しているというだけで決しておかしな事ではありません。また、サルトルをモチーフにした作家の事を、まるで神格化したように崇め心酔してしまっている主人公の友人、ていうのも皮肉たっぷりだし、親の遺した資産で悠々自適に暮らしてきた主人公が社会に出て組織の中で働いた時、与えられた仕事の意味がまるでちんぷんかんぷんで成果も出ない、というのもまた然り。

主体の恋愛物語は、幸せな前半と悲しみの後半との落差が激しく、カラフルだった世界は悲しみが深くなるにつれてモノクロへと変わっていきます。主人公の心境を色で可視化していて、とても印象的です。

だらだら書いてしまいましたが、むつかしい事は考えずに、ジャズナンバーとともに素朴で愛らしいミシェル・ゴンドリーの創作を眺めるだけでも見ごたえじゅうぶんなんだけどね。

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主人公の友人が作る天才的な料理も「カクテルピアノ 」もすばらしく最高。

 

 

ムード・インディゴ?うたかたの日々?(字幕版)