ビールとポップコーン

ネタバレ書かずに、観た映画(ときどき読んだ本など)を雑文多めに記録しています。

「最後の追跡」を観ました

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最後の追跡(2016)

約1か月前、機内上映で「何観ようかな〜」と選んでいたら、私の大好きなおじさんジェフ・ブリッジスが出ている映画を見つけたので観てみました。

ストーリーは、テキサスのお金に困った兄弟が銀行強盗を繰り返し、それを定年間際の警察官(テキサス・レンジャー?)が追う、という往年のウエスタン映画みたいな感じです。ネオ・ウエスタンというのかな。馬に代わってちょっとしたカーチェイスがあったりテキサス男の撃ち合いがあったりはしたけれど、全体的に静かなトーンの映画。それはストーリー展開もまた然りで、俳優たちの演技や皮肉屋な役のジェフ・ブリッジスジョークとかはよかったけれど、正直「おもしろい!」とはおもえませんでした。

早朝からのフライト&トランジットでの遅延、からの13時間フライト(帰国)中に観ていたので、観ていたというかただ目が開いていただけだったのかもしれない…とちょっと思い直したのは、帰国してからこの作品がアカデミー賞の数部門でノミネートされていると知ったときです。結局受賞は逃しましたが、Netflix作品でありながらアカデミー賞にノミネートされるほど、アメリカ国内で話題になった作品なんですね。

 

これは日本でいうところの時代劇リバイバルみたいな感じで、ネオ・ウエスタンスタイルがアメリカでウケたのかな?とか、アカデミー賞受賞しているコーエン兄弟の「ノーカントリー」になんとなくプロットが似ているからかな?とか、つまらないことを色々考えました。

 

色々考えた結果いちばんしっくりくる答えは「この映画がいまのアメリカを象徴しているのかも」です。

 

そもそもアカデミー賞はエンターテイメント色と政治色が強いお祭りなわけで、今回の授賞式を観ていても、司会のジョークや受賞者のコメントはトランプ大統領批判がものすごく目立ったし、主演&助演賞が男女ともそれぞれ白人と黒人半々だったり、エンターテイメント性の強い「ラ・ラ・ランド」と、人種や性におけるマイノリティーを扱った「ムーンライト」が、作品賞発表のごたごたも含めて話題になったり、とにかく「エンターテイメント」と「政治」なんだな、とあらためておもったのです。

長編アニメーション部門だって「ズートピア」だったし。それにしても2013年からスタジオジブリは毎回ノミネートされているのに、毎回ディズニーがオスカー獲っちゃうのがなんとなく悔しい。…それはさておき。

 

この「エンターテイメント」と「政治」という視点で「最後の追跡」という映画を考えてみると、すごくしっくりきます。まず、アメリカ人が大好きなウエスタンという古典がベースになっています。そして、銀行強盗をはたらく兄弟はお金に困ったホワイト・トラッシュであり、ネタバレを避けて言うと、彼らの目的は「遊ぶ金欲しさに強盗〜♪」とかではなく、事の発端にはサブプライムローンが絡んでいるのです。

虐げられてきた多くの有色人種やマイノリティに支持されたオバマ大統領の時代は終わり、新しい大統領としてトランプを選んだのは、豊かなアメリカの時代を築いた先祖を持つ、今は貧しいアメリカ白人だったわけです。

「いまのアメリカを象徴しているのかも」しれないこの映画を、アメリカの政治に深く興味を持っていない日本の私が大いに感動するわけない、ということで納得です。

 

ちなみに、ジェフ・ブリッジスはワイルドな風貌も好きですが、あのちょっとこもった声がなんとも言えず大好きです!

 

 

 

「海よりもまだ深く」を観ました

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海よりもまだ深く(2016)

かつて作家として受賞したこともある良多(阿部寛)ですが、現在は興信所で働きながらギャンブルに精を出すダメな中年男。良多に愛想を尽かした妻の響子真木よう子)は息子の真悟を連れて出て行ってしまいましたが、良多は興信所勤務であることを活かし、息子や元妻の様子を毎日のようにうかがっていました。

良多の姉(小林聡美)は団地に一人で暮らす年老いた母(樹木希林)を頻繁に訪ねては、夕食のおかずを作ってもらったり、孫の習い事に援助してほしいとさりげなく頼んでみたり、そして「良多には絶対お金を渡さないでよね!」と念を押したりしています。

そんな姉の言動はおかまいなしに、良多は金銭的にキツくなると実家に帰っては仏壇や箪笥をあさります。良多は、響子に支払う養育費も滞らせていたし、息子のために野球のスパイクすら買ってあげられずにいました。

 

私の中の阿部寛は「トリック」とか「スニッファー」のおかげで、すっかり変人科学者みたいな役がお似合いのイメージなのですが、しがないダメおじさんの役がなかなかのハマリ役で意外でした。競輪場のシーンとか。「歩いても 歩いても」も観なくちゃ。

今の自分を否定するように、「こんなはずじゃなかった」という気持ちが滲み出ている良多の台詞は、笑えるけれど笑えない。世間には、思い描いていた大人になれなかった大人の方が圧倒的に多いんじゃないかとおもいます。

 

長身の阿部寛には昭和の団地サイズが小さくて、部屋の襖とかドアの類は頭を下げないと通れないし、古くて小さいお風呂に縮こまって入っている様子がおかしかったです。団地の家は、何十年も過ごした古い団地の独居老人が暮らす一室って絶対こんな感じ、というものすごいリアルがありました。おばあちゃんが孫に出してあげる“おやつ”って孫からしてみると謎チョイスだったりするけれど、その“おやつ”も抜かりなく気が利いていて、ちょっとニヤッとしてしまいました。

あと、過疎化が進んで老人ばかりになっている団地で「クラシック音楽を聴く会」みたいのがあるのですが、そのシークエンスがほんのり醸している哀愁がたまらないです。

是枝裕和監督作品に共通することですが、自然でリアルな会話もよかったです。「そんなことしたらアレだから」とか「アレしちゃおう」とか、日常生活の中で「アレ」という便利なことばはよく使われているとおもいますが、それがそのまま台詞になっています。こういうの好きです。確か、向田邦子作品にも使われていたとおもうのですが、記憶違いかな。

 

崩壊してしまった家族のやり切れなさが描かれていますが、この家族のその後が気になるラストでした。

 

 

 

 

海よりもまだ深く [DVD]

「ガール・オン・ザ・トレイン」を観ました

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ガール・オン・ザ・トレイン(2016)

たのしくてついつい飲み過ぎてしまったとき、何度もワープを経験したし、まったく記憶がない…という恐怖も1度だけ経験しました。目が覚めると自分のベッドに寝ていたのだけれど、床には脱ぎ捨てられた泥のついたジーパン、そこらじゅうにばらまかれた小銭、そしてぺちゃんこに潰れたトルティーヤが…。自分自身も部屋もどうしてこんな無残な状態なのか全然思い出せない…まずいことやらかしていませんように!と願うしかありませんでした。

 

この映画の主人公レイチェル(エミリー・ブラント)は、離婚のつらさを乗り越えられずアルコールに依存してしまいます(こういうお酒って哀しいですね)。レイチェルはベロベロの状態で毎日毎日電車に乗って、かつて自分が結婚生活を送っていた家を見に行きます。車窓から見えるのは、元夫、彼と再婚した女性、そして2人の間に産まれた赤ちゃんが仲睦まじく暮らしている大きな一軒家。そしてその隣には、美男美女の夫婦がイチャイチャ暮らしていて、主人公は「理想の夫婦」として彼らの様子も毎日チェックしていました。

ある日、日課ののぞきをしていると、理想の夫婦の奥さんが見たことない男性とバルコニーで抱き合っている姿を目撃してしまうのです。

 

アル中主人公、別れた夫の新妻、そして主人公が憧れを抱いている人妻、この3人の女性を中心にしたサスペンス・スリラーです。

ひどいアルコール依存のためにベロベロでボロボロになっていく主人公。異常なストーカー扱いされて罵られ、しかも記憶が飛んじゃってるから「あれ、私何かとんでもないことしでかした…?」という恐怖に混乱して、本当に哀れです。

その思い出せない「何かとんでもないこと」が、例えば服を脱いじゃった〜とかぶん殴っちゃった〜とかならそのうち笑い話になるかも?しれないけれど、「人殺しちゃたかも…」なのだから頭ん中真っ白になって震えちゃいます。

主人公の泥酔や混乱している様子をぐわーんとしたカメラで表現していたり、断片的に映像を挟み込んでいたり、視覚効果が印象的でした。

 

悔しかったり、羨ましかったり、まぁいろいろあるとおもうけれど、のぞき見なんてするもんじゃないですね。

FacebookとかInstagramとかで、電車に乗らなくても簡単に他人の生活をのぞき見できちゃう世の中だもの。切り取られた写真に見えるリア充っぷりや理想の生活に、嫉妬して自己プロデュースに狂ったり、落ち込んで元気が無くなったりしちゃう人、多いとおもいます。

だったら見ない方がいいとおもいます。私は見ますけど。だって、あの四角い写真のフレームのすぐ隣にはきっと雑多な生活臭があって、一生懸命スタイリングしたり何度も撮り直したりしているんだって想像すると、なんだか可笑しいから。

 

あと、オン・ザ・トレインしているのは全然ガールじゃない。

 

 

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