ビールとポップコーン

ネタバレ書かずに、観た映画(ときどき読んだ本など)を雑文多めに記録しています。

「彼女たちの時代」を観ました

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彼女たちの時代(1999)

「いいドラマ」とか「好きなドラマ」とかでタイトルは聞いたことがあったものの、なかなか観る機会のなかったドラマ(ちなみに1999年放送時、私は高校生でした)。それもそのはず、放送後に発売されたVHSはとっくに廃盤で、権利の問題か何かでDVD化もされていないのだとか。FOD配信一覧の中に見つけて、喜び勇んで一気見です。

 

26歳のOL・深美(深津絵里)は、カルチャースクールのゴスペル教室で同い年の千津(水野美紀)と出会い、意気投合します。そこへCPA(米国公認会計士)の資格取得を目指してカルチャースクールに来ていた、これまた同い年の次子(中山忍)が加わり、性格もタイプもバラバラな26歳女3人の友情物語が始まるのです。

 

例えば、ちょっと特殊な仕事をしている主人公が毎回大きなトラブルを乗り越えたり、事件を解決したり、流行のおしゃれな服を着て個性的な仲間とつるんだり…そういった派手さやキラキラは、登場人物にはひとつもありません。
主人公の深美は通販会社でクレーム対応をしているオペレーターだし、千津は食品会社の正社員といってもファミレスのウェイトレスとして出向中、次子は営業職へ異動願いを出すものの、男社会でうまく立ち回れずに苦労しています。彼女たちは、どこにでもいる<彼女たち>なのです。
男性の登場人物もまた然りです。とことん会社に苦しまされるエリート会社員(椎名桔平)だったり、叩き上げの中年サラリーマン(平泉成)だったり、才能が無いことを自覚しつつも夢を諦められない中途半端なバンドマン(加藤晴彦)だったり…。彼らもまた、どこにでもいる人々です。


つまりこの物語は、何者でもない冴えない人たちが日々抱える、仕事、恋愛、人生における大小様々な苦悩や葛藤や悲哀を丁寧に描き、同時に大人になってからの友情っていいものだなーということを教えてくれるのです。

 

バブル崩壊後のロストジェネレーションをうまく反映したドラマで、時代の閉塞感や個人の無力感を絶妙に表現しています。パワハラやセクハラもてんこ盛りの今となってはドン引きレベルで、こんなことがまかり通っていたなんてゾッとします。<人間開発室>って本当に存在したのかな…。女性は20代で寿退社が当たり前だったから26歳でも御局様一歩手前だったり、女性が営業職で男性と同じように働くなんて笑わすな、みたいな時代です。そういえば、OLという言葉も今となってはあまり聞かなくなりました。とにかく、過去20年で日本はずいぶんと性差の無い社会へ変わったようにおもいます。

 

毎話挿入される主人公の自分語りがとても良くて、<大多数の普通の人々>の代弁のように感じました。

前向きに生きよう、というのが嫌いだ。問題はそんなに簡単ではない気がするのは私だけだろうか。いったいどっちが前なのか分からないのは、私だけだろうか。

 

プロローグに、「私はここにいるんだ、それを誰かに分かってもらいたい」というい台詞があります。一体自分は何者なのだろう?自分を変えたい、変わりたい、でもどうしていいか分からない…。
インターネットやSNSで誰でも発信できるようになり、承認欲求も満たしやすい時代になりましたが、時代が変わっても、世代が違っても、このドラマに共感できることはたくさんあります。人生は小さな出来事が延々とつながっているものなのだ、ドラマチックなことは起こらなくても、小さな楽しみや幸せがあるだけでいいじゃない。
彼女たちが出会ったひと夏の物語はあまりにも現実味があって、40代半ばになった彼女たちがどこかで生きているような気がしてしまうほどです。地味だけれど、良質なドラマでした。

 

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やっと観ることができて、ほんとFODグッジョブ!です。他にも過去のドラマがたくさんラインナップされていましたが、「お金がない!」が無かったのが残念。ただ31日間は無料で観られるので、なつかしのドラマなど見つけて一気見するの、オススメです。

 

(解約方法が紹介されています。ご参考に)

 

「ナオミとカナコ」を観ました

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ナオミとカナコ(2016)

今まで「映画ときどき本」の記録をブログに書いていましたが、そこに「ときどきドラマ」を付け加えてみようとおもいます。テレビっ子なので毎週たのしみに観ている民法のドラマもありますが、ネット配信で一気見するのも好きです。映画や本と同様、ネタバレなしでざっくり余談多めに記録しようとおもいます(気まぐれに)。

 

この「ナオミとカナコ」は奥田英朗さんの小説が原作です(ちなみに原作は未読)。ドラマの放送はちょうど2年前。広末涼子内田有紀、という90年代に青春を送った私としてはとてもグッとくる女優2人のW主演で、しかも「いっそ2人で殺そうか、あんたの旦那」というかなりキャッチーな台詞が紹介されていたものだから、放送前からわくわくしていたのを覚えています。FODにアップされていたのでいそいそと一気見しました。

 

百貨店の外商部に勤める直美(広末涼子)は仕事のできる利発な独身女性。一方、専業主婦の加奈子(内田有紀)はエリート銀行員の夫・達郎(佐藤隆太)と、ハイソなタワーマンションに住んでいます。2人は大学時代からの親友であり、夫のDVに苦しむ加奈子を直美は何とかして救ってあげたいとおもっています。わずかな希望を持って直美の助言に従う加奈子ですが、反して達郎のDVはエスカレート…。加奈子の命の危険を感じた直美は、最終手段として達郎殺害の完全犯罪を計画するのです。

私のような単純な素人には、直美の計画は「なかなかすごい計画!」と思えるのですが、ツメの甘さや不運な偶然が重なって、毎話ヒヤヒヤさせられるストーリー展開になっています。

 

主演の2人もキーパーソンとなる役者も、そろって演技派。佐藤隆太って昔から苦手でしたが、「エリート暴力夫」と「心優しい不法滞在中国人」という真逆の役を1人2役で見事に演じていてちょっと感心しました。

それから高畑淳子が演じた、やり手の中国人女貿易商の「李社長」がもうサイコーなのです。放送当時は毎週録画して、李社長の登場シーンだけを編集してDVDを作り、友人にもプレゼントした(押し付けた)ほど、ハマリ役で好きなキャラクターです。

暴力夫の姉・陽子を演じた吉田羊も素晴らしいです。陽子は全くもってなんにも悪くない被害者家族なのに、吉田羊の演技力と存在感をもって完全に「直美と加奈子の敵」になっています。「犯罪者を応援してしまう」という善悪の逆転現象を決定付け、ラストにも繋がる大事な役どころなのです。

 

加奈子はDV被害者で正常な判断ができなかっただろうし、直美は自身の生い立ちと重なってDVに苦しむ親友をどうしても救いたかった。2人が「DV夫を殺そう」と決意するのは理解できなくもないのですが、恐ろしい犯罪を決行したすぐ後に2人して清々しい気持ちになって小旅行に出かけちゃったりして、何だか秘密を共有してより絆が深まった女子大生のノリが見えなくもないなーとおもいました。

 

完全犯罪を目論んだ直美と加奈子ですが、最終的にあるキーパーソンの想定外の行動によって窮地に立たされます。事件を起こすのは人、その人を助けようとするのも人で、追求するのも人。どんな完全犯罪を計画したとしても、人の心までは計画できないのです。

前半は「いつ実行するのか?」、後半は「犯罪はバレるのか?」という2大ドキドキで物語が展開していきますが、ラストはとても印象的なシーンで終わります。

良いキャストでストーリーも文句なしのおもしろさなのに、視聴率はあまり良くなかったらしい。世間の関心を示す数字と自分の興味は必ずしも比例しないんだな、と思ったものです。

 

ナオミとカナコ DVD-BOX

「葛城事件」を観ました

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葛城事件(2016)

昨年末に観た「その夜の侍」の湿っぽい衝撃が忘れられず、赤堀雅秋監督の別の作品も気になり観てみました。

 

両親と2人兄弟の葛城家。この一家の引きこもり弟が無差別殺人事件を起こしてしまうのですが、事件の前後を時間軸が行ったり来たりしながら、家族の様子を描いている作品です。

一見、諸悪の根源は父親(三浦友和)であり、父親の言動が家族の心を摩耗させて崩壊させていくように見えます。でも何だか、そんな単純な話じゃないような気もするのです。兄にばかり期待し、乱暴ですぐ怒鳴り暴力をふるい、小さな社会で王様気取りの傲慢な父親は完全に異常です。ただ、家事を放棄して引きこもりの弟を溺愛する母親(南果歩)も、悩みを相談も解決もできず全て背負って静かにどうにもならなくなってしまう兄(新井浩文)も、無職引きこもりを正当化する高慢な弟(若葉竜也)も、みんなちょっとおかしい。それに加えて、死刑判決を受けた弟と獄中結婚した人権活動家(田中麗奈)もやっぱりおかしい。主要登場人物の誰もが心闇だらけに見えて、最終的に1ミリも救いがなかった。

無差別殺人犯を生んだのは家庭なのか?社会なのか?明確なこたえは映画の中には無いし、凶悪犯ってどこにでも生まれる可能性があるような気がして、不気味な恐怖と胸糞感の残る映画です。このお話、大阪の池田小事件の元死刑囚・宅間守をベースに、色々な事件のソースを混ぜて作られたそうです。

 

食事シーンが印象的でした。料理をしない母親が無表情で食べるコンビニ弁当やカップラーメン、スーツ姿の兄が公園で食べる菓子パンなど、どれも寂しく粗末なもの。幸せな映画には美味しそうな食事が出てくることが多い気がするので、冷たく乾いた食事はその生活環境や心理状態のメタファーになっているのだとおもいます。そういう視点で見るラストシーンは、異様で、馬鹿馬鹿しくて、絶望的でした。(しかし無性にとろろそばを食べたくなるという不思議)

 

 

葛城事件