ビールとポップコーン

ネタバレ書かずに、観た映画(ときどき読んだ本など)を雑文多めに記録しています。

「イン・ザ・プール」を観ました

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イン・ザ・プール(2005)

三木聡長編映画初監督作品なのかな。様々な心の問題を抱える人たちが精神科医の伊良部(松尾スズキ)のところにやってくるお話。

オダギリジョーは陰茎硬直症?だし、市川実和子は何度確認しても不安になってしまう強迫神経症だし、田辺誠一は泳ぐことでストレスが解消できると信じているプール依存症だし。どれも笑ってはいけないれっきとした病気なのだけれど、それらをユーモラスに表現しているから全然ダウナー感なしで観られます(いやでも実際そうなったら相当重症なのは間違いないけれど)。

オダギリジョーの症状は正直女性の私にはよくわからないところもあって、でもまあこんなことになったら大変だろうなぁ、というのはわかる。市川実和子田辺誠一の症状は、なかなか多いのかなと思います。

私の母は大抵のことは大雑把だけれど、ある一部のことにはすごくこだわりがあります。例えば、洗濯物の向きは全て同じ方向でなくちゃダメで、それだけならまだいいのだけれど、家族の誰かひとりだけ違う向きに干すとその人は事故に遭うんじゃないか、とか。出かける時にスリッパを、帰宅時にスッと履ける状態に揃えておかないと、二度と帰宅できないんじゃないか、とか。こわい。

私は精神科医ではないので本当のところはよくわからないけれど、おそらく幼少期の家庭環境などから家族に対する執着というか、失いたくないという想いが強すぎて極端な不安に陥ってしまうのだと思います。母はこの不安のせいで日常生活に支障をきたすようなことは無かったし、娘たちが自立したり自分も歳をとっていちいち心配していたら疲れるようになったのか、今は洗濯物やらスリッパひとつで不安を抱くこともなくなったようです。つまり、この程度の不安や自分なりのルールやジンクスを持っている人ってたぶん結構いて、誰でも症状が悪化したり、何かに依存したりする可能性があるのだと思う。

ところで、原作ではこのDr.伊良部がシリーズ化されているそう。ウィキペディアを見てみたら、阿部寛でドラマ化したりもしていたみたい(見たい)。原作もおもしろそうだなーと思ったら、昨年のドラマ「ナオミとカナコ」の原作者なのでびっくりした。へー知らなかったなー。あのドラマ好きだったな。主演の広末涼子内田有紀も綺麗だったし、高畑淳子の李社長も最高だった。李社長が好きすぎて、李社長のシーンだけを寄せ集めたDVD「李社長スペシャル」を作って友人にもあげました。

 

 

イン・ザ・プール [DVD]

「エレファント・マン」を観ました

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エレファント・マン(1980)

2017年は「ツイン・ピークス」で盛り上がりましたが、私がいちばん最初に観たデヴィッド・リンチは「エレファント・マン」です。

小さい頃、母から「エレファントマン」と「ノートルダムのせむし男」というワードを時々聞いていて、たしか私が猫背で姿勢が悪くなっている時なんかに言われていたような記憶があります。今の時代は当然ながら、当時としてもひどい差別的だよなぁと思うのですが……。

そんなわけで私はこの「エレファントマン」と「せむし男」がなんなのかもよくわからずに、どうやら醜い見た目の男なのだろうという想像で、しばらくの間気になる存在でした。映画をよく観るようになった中学生の頃、「エレファント・マン」はデヴィッド・リンチという人が撮った映画で、実在した人物がモチーフになっていること、そして「ノートルダムのせむし男」はヴィクトル・ユゴーの小説であることを知りました。いずれも醜い見た目を持つ男の悲しい物語だった。

1800年代後半のロンドン。ジョン・メリック(ジョン・ハート)という青年は生まれつき重度の奇形のため、見世物小屋で「エレファント・マン」として好奇と恐怖の目に晒されていました。大きな頭、腫瘍だらけの身体、湾曲した背骨。杖無しでは歩けず、仰向けに寝ることすらできません。そんな彼を偶然見つけた外科医のフレデリックアンソニー・ホプキンス)は研究材料としてジョンを興行主のバイツから引き取り、病院の屋根裏部屋で暮らさせるのです。

誤解を恐れず書くと、「こわいもの見たさ」というような気持ちは誰にでもあるんじゃないかな?「世界仰天ニュース」とかでも「身体が木のようになってしまった青年」とか摂食障害で痩せ細ってしまった人、逆に自力で歩けない程太ってしまった人、そういう見た目に特徴のある人たちを見たり知ったりするときのきっかけとして「好奇心は無い」と100パーセント言い切れるのか?彼らの苦労やつらさ、人となりを知って、最終的にはエールを送りたい気持ちになたっとしても。

この作品でもそういったところが分かりやすく描かれていて、ベールに包まれた「エレファント・マン」の全体像が映し出されるときは観ているこちらはギョッとしてしまうけれど、フレデリックが徐々に人道的になってゆく様子を観て、こちらも心を動かされていきます。ジョン・メリックが逃げ込んだ地下鉄のトイレで心の内を叫ぶシーンは本当に揺さぶられてしまうし、彼が1人でお芝居ごっこをするシーンは胸が締め付けられて涙が止まりません。

人としての権利は人間誰もが持っているもので、それは平等でなければならないと思います。けれど、人間はその環境や状態において決して平等なんかじゃない。その不平等を穴埋めして補うのが人間愛だったり博愛のヒューマニズムなのだと思います。

デヴィッド・リンチがこの作品でヒューマニズムを描こうとしたのかは分からないけれど、かつて「フリークス」と呼ばれたような人たちを物珍しさをもって見てしまう人々の心理と、特殊な外見を持ったジョン・メリックという1人の青年の、人間としての悲しみや人生における一瞬の喜びは、明らかに表現されていると思います。

世界から差別や偏見を無くすのはかなり難しいと思います。だってこんなに狭い日本でも「えた・ひにん」の時代から現在に至るまで差別や偏見で溢れているんだもの。でもそれらを無くす努力って実はとてもシンプルなことで、ブルーハーツでもおなじみの「人にやさしく」、結局これに尽きるんじゃないかと思います。

 

 

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「FRANK -フランク-」を観ました

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FRANK -フランク-(2014)

ソングライターになりたいと思いつつ、つまらない歌を書きながら平凡な生活をしているジョン(ドーナル・グリーソン)が風変わりなバンド<ソロンフォルブス>と出会って生活が一変してゆく物語。

<ソロンフォルブス>のギターボカールであるフランク(マイケル・ファスベンダー)は大きな張りぼてかぶり物を絶対に外さないし(眠る時もシャワーの時も!)、その他のメンバーもフランス語を話す意地悪なギター男やドラム女だったり、テルミン使いのクララ(マギー・ギレンホール)はフランクに心酔しきっています。肝心の音楽も実験的なものばかりで、これじゃあ一般ウケはしないよなーという感じ。

主人公は音楽の才能もセンスもない凡人で、でもミュージシャンとして大成したいがために、そして極限まで音にこだわるフランクらバンドメンバーとの共同生活の中で「フランクってすごい…!」と惚れ込み彼の音楽を世の中に広げたいがために、とてもイマっぽい手法で一部の界隈で話題のバンドへと導くのです。

以下少々ネタバレになりますが、よくあるバンドムービーだったら<バンドがバズる→仲間割れする→才能のあるフランクだけが音楽界で活躍する>云々な流れだと思います。が、この映画はちょっと違っていて、実はフランクは精神的な問題を抱えていて、結局ビターエンディングなのです。フランクはダニエル・ジョンストンとかアウトサイダーアートを思わせる存在です。

フランクは確かに非凡な才能を持っているのだろうし、音ひとつにしてもものすごいこだわりを持っています。そんなフランクの世界に常人の入り込む余地は無くて、人気バンドとしてツアーをしたりとかSNSで発信したりとか、そういう俗世とは乖離したところでしか生きられないんだろうな、と思いました。

才能が無いのにその道に進めると信じている人、一方で自分の才能の無さに気づいて他力本願になる人、人とは違った表現をする人を才能がある!と信じてしまう人…多くの人は残念な凡人になりがちで、アートってなんなんだろう、と思ってしまいました。

 マイケル・ファスベンダーは映画の中でほんの少ししか顔を出さずにずーっとかぶり物をしていますが、それでもフランクの喜怒哀楽がちゃんと伝わってきてスゴイなー。

 

 

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